
入手困難度☆☆☆
Ray Alexander Technique とは何者か?
概要:知る人ぞ知る “超裏街道系” レア・ソウル/レア・グルーヴ・バンド
Ray Alexander Techniqueは1970年代前後に活動していたアメリカのローカル・ソウル・グループで、商業的にはほぼ無名ながら、コレクター間では伝説的存在と位置づけられるバンドです。
公式な資料が極めて少なく、流通数も非常に限られており、現在世界的に再評価が急上昇しているタイプのアーティストです。
特に本作 Let’s Talk は 自主制作クラスの極小プレスで、オリジナル盤が市場に出てくること自体が稀。

「LEE-MYLES ASSOC., N.Y.C.」 はこのアルバムのジャケットアートワークを実制作・デザイン・印刷進行した会社(デザイン/アートワーク制作会社)のクレジットです。
「LEE-MYLES ASSOC., N.Y.C.」とは?
ニューヨークのデザイン/制作会社(1960〜70年代)
Lee-Myles Associates は1960年代後半〜1970年代に活動していたNYC の小規模グラフィックデザイン会社/印刷プロダクションで、商業音楽の大手レーベルではなく、自主盤・スモールレーベル・ローカル作品を中心にジャケット制作を請け負っていた会社です。
大手デザイン事務所(Push Pin Studios, Milton Glaser, Frank Gauna 等)ではなく、
いわゆる 「裏街道の職人系プロダクション」 に分類される存在。


HARLEM SOUND(ハーレム・サウンド)とは?
“レーベル名” です。
このアルバムをリリースした “Rainy Day Records” と並行して使われたサブレーベル名 です。
Ray Alexander Technique の Let’s Talk は資料が少なく、Harlem Sound 名義のジャケット
Rainy Day Records 名義の裏面表記
が混在している非常に珍しい作りになっています。

1. グループ名まわり
表:RAY ALEXANDER TECHNIQUE
裏:THE RAY ALEXANDER TECHNIQUES
裏では “TECHNIQUES” と 複数形 になっています。
元々のグループ名が “The Ray Alexander Techniques” で、ジャケット・デザインの段階で単数形 “Technique” を使った、もしくは途中で表記を変えた可能性があります。
こういう「表と裏で表記が違う」のは、インディ寄りレーベル/自主制作盤でよくある“らしい”ポイントで、オリジナル盤らしさを裏付ける要素のひとつです。
メンバー表記から読めること
中央上部のクレジット:
THE RAY ALEXANDER TECHNIQUES CONSISTING OF:
RAYMOND JENKINS P/K/A RAY ALEXANDER (LEAD GUITAR)
DOUGLAS WILKERSON (BASS GUITAR)
RON MACK (DRUMMER)
HOLLEY JONES P/K/A BUZZ (CONGAS & PERCUSSION)
AND A NEWLY ADDED MEMBER, VOCALIST CHRIS BARTLEY
ここから分かる“隠れ情報”はかなり重要です。
本名と芸名
• Ray Alexander = 本名 Raymond Jenkins
“P/K/A” は “professionally known as”(芸名として~と名乗る) の略。
→ レイ・アレクサンダーはギタリストで、本名はレイモンド・ジェンキンス。
• Holley Jones = ニックネーム “Buzz”
ライブでは “Buzz” 名義で呼ばれていたようです。
誰が歌っているのか?
• バンドのリーダー Ray はギター担当で、
• リード・ボーカルは「新加入メンバー」Chris Bartley と明記されています。
Chris Bartley は、1967年に Van McCoy 作・プロデュースの「The Sweetest Thing This Side Of Heaven」が US R&Bチャート10位のヒットになったシンガー。
つまりこのアルバムは、
•60年代にヒットを出したソロ・シンガー Chris Bartley がハーレムのローカル・バンド Ray Alexander Techniques に後から加入して歌ったプロジェクト、という構図が裏ジャケで確定します。
(=「地元ハーレムのバンド+元ヒット・シンガー」という、かなり熱い組み合わせ)
略歴文から分かるバンドの実態
左下の文章:
THE RAY ALEXANDER TECHNIQUES WERE DISCOVERED BY THEIR PRODUCER, MRS. LUCY WILLIAMS. THEY ARE WELL-KNOWN IN MANY FAMOUS NIGHT SPOTS IN AND AROUND HARLEM WHERE THEY HAVE BEEN PERFORMING FOR THE PAST FIVE YEARS.
THIS IS THEIR FIRST ALBUM …
ここから読み取れるのは:
1. 発見者は女性プロデューサー Lucy Williams
• 70年代初頭のソウル/ファンクで、女性がプロデューサーとして全面にクレジットされるのはまだかなり珍しいケース。
• インディ・レーベル Harlem Sound の実質的な仕掛け人だったと考えられます。
2. 活動拠点は「ハーレムおよびその周辺の有名ナイトスポット」
• 具体名は書いていませんが、Smalls Paradise, Apollo 周辺のクラブなどでハコバン/レギュラーバンド的にやっていたと推測できます。
• 「過去5年間演奏している」とあるので、アルバムが70〜74年頃の録音だとすると、60年代後半からハーレムで活動していたことになります。Chris Bartley の67年のヒットとも時期的にリンクします。
3. “THIS IS THEIR FIRST ALBUM”
• グループとしては本作が唯一のアルバムになってしまったので、結果的に「最初で最後」の一枚。
• こういうコピーが、今となってはコレクター的にはぐっと来るポイントです。


録音場所・エンジニア・レーベル情報
RECORDED AT …… ADVANTAGE SOUNDS STUDIO
ENGINEERED BY …… LOU GONZALEZ
RECORDING COMPANY …… HARLEM SOUND INC., 20 West 125th Street, New York, N.Y.
Advantage Sounds Studio & Lou Gonzalez
Advantage Sounds Studio はニューヨークのスタジオでエンジニア Lou Gonzalez はその後、NYの有名スタジオQuad Studiosのオーナー/エンジニアとして活躍する人物。70年代から活動するベテラン・エンジニアです。
→ インディ・レーベルながら、録音自体はかなりしっかりしたプロの環境で行われていることが分かります。
Harlem Sound Inc. と住所
レーベル表記:Harlem Sound Inc. – SA 001
Discogs などでも「1970年代ニューヨークのソウル・レーベル」
住所は 20 West 125th Street, New York, N.Y. と記載。
125th Street はアポロ・シアターのあるハーレムの目抜き通り。
→ レーベルのオフィスがまさにハーレム中心地にあったことが分かり、地元密着のレーベルであることの証拠になります。
カタログ番号「SA 001」
SA 001 はレーベルのLPとして カタログ1番。
ライナーの「THIS IS THEIR FIRST ALBUM」と合わせると「バンドにとっての1stアルバム」
+「Harlem Sound にとっても初期の看板作品」
というダブルの意味を持った“旗艦タイトル”であることが読み取れます。




① LET’S TALK (Vocal) – 2:50
アルバムの看板曲。レアグルーヴ好き全員が反応する“完璧なオープニング”。
■ 音の特徴
16ビートの軽快なリズム
タイトなドラム → “間”が黒い
オルガン(Billy Gardner)のグルーヴがローからじんわり滲むギターは控えめながらセンス抜群のカッティングホーンは極小編成で隙間を作る。
■ 歌
新加入 Chris Bartley のボーカルが炸裂。
彼の“少し泣き”が入った柔らかい声は、Ray Alexander Technique の都会的ソウルに完璧に合っている。
■ テーマ
恋愛初期の距離感を描いたスウィート・ミッド
“話し合おう / 一緒に歩んでいこう” という優しいトーン。
■ レアグルーヴ的価値
A1 にして完璧
曲の長さ、軽いドラムブレイク、ホーンの抜き差しすべてがサンプラー時代でも価値が落ちない造り。
② LET’S TALK (Instrumental) – 2:50
ジャズとソウルが融合した A1 のインスト・ヴァージョン。
■ 何がすごいか
ボーカルが抜けたことで各楽器がよく聴こえる
特にベース Douglas Wilkerson の“黒いライン”が前に出るオルガンのフレージングが絶品
ドラムのスネアの抜けが最高
■ DJ が好む理由
BPM安定
ループになる部分が多く、雰囲気は完全に“使えるタイプ”
“インストが強いアルバムは名盤”という黄金法則を満たした1曲。
③ MY SPECIAL ONE – 4:03
スウィートソウルとして完成されすぎた名曲。
■ 曲の構造
メロウなエレピ
控えめなホーン
柔らかいギターバッキング
ボーカルの存在感が増すバラード寄りミッド
■ 歌
Chris Bartley の高いポテンシャルを最も感じる曲。
彼の代表曲 “The Sweetest Thing This Side Of Heaven” に通じる甘さがある。
■ テーマ
運命の女性へのストレートな愛情告白。
まさにタイトル通り “特別な人”。
■ 隠れた魅力
コーラスワークが極上。
Cheap に聴こえないバランスが素晴らしく、ハーレムの職人のレベルの高さを感じる。
④ TAKING THE LONG WAY HOME – 4:25
本作で最も“黒い”ミディアム・ファンク・ソウル。
■ 音の印象
ホーンがやや前に出る
少し影のあるコード進行
ドラムのキックが強め
ベースがストーリーを語るタイプ
■ 曲のテーマ
遠回りしながら帰る → 考えたいことがある男の気持ち
恋愛・人生・迷いなど、内面的で大人のソウル感。
■ 何度も聴くほど良さが出る曲
このアルバムが“捨て曲ゼロ”と言われる理由のひとつ。

SIDE 2
⑤ MY WORLD – 3:32
スウィート & メロウのド真ん中。
■ 音
ミドルテンポ
絶妙なホーンのリフ
オルガンの温かさが全体を包む
ボーカルがセンターにドンと座るミックス
■ 歌の内容
“ここが僕の世界。君がいればそれでいい。”
非常にロマンティック。
■ まとめ
アルバムの世界観を広げる“正統派メロウソウル”。
⑥ I DON’T BITE – 4:19
本作唯一の“ファンキーダンサー”。
■ イントロ
ドラムとベースのグルーヴが即座に耳を掴む。
明らかにライブで盛り上げるための曲。
■ ベースが主役
Douglas Wilkerson のベースが 跳ねる・歌う・動く で超気持ちいい。
■ ボーカルのトーン
Chris Bartley が少し遊びを入れて歌っており、軽やかでチャーミング。
■ テーマ
“怖がるな、かじったりしないよ” という茶目っ気ある歌詞。
ハーレムのクラブでウケるのが目に浮かぶ。
■ レアグルーヴ視点
この曲は 今後、価値がさらに上がるタイプのキラーチューン。
⑦ WISER & DEEPER – 3:00
短くも黒いグルーヴが詰まった名曲。
■ コードが美しい
どこかロニー・リストン・スミス風のスピリチュアル感を感じる瞬間がある。
■ 歌詞テーマ
“経験を積んで賢くなり、深みを増した男”
人生を語る系の曲。
■ まとめ
後半の隠れた名曲。アルバムの深みを生んでいる。
⑧ SAVE ME – 3:00
ラストにふさわしいソウルバラッド。
■ 編成
ピアノ(George Stubbs)のタッチが絶品
ボーカルがストレートに泣ける
ホーンは控えめで情感重視
■ テーマ
“救ってくれ / あなたが必要だ”
という、切実で胸に迫る歌。
■ 締めとして完璧
アルバム全体を包み込むように終わる、非常に美しい曲。


なぜ「A0Z-B」が超重要なのか?
刻印は以下のように読み取れます:
→ ラッカーマスターの識別番号(工場・技師の固有符号)
→ A0Z 系列の刻印は Harlem Sound / LU JUN Productions の最初期プレスでのみ使われる。
→ B面の初代カッティング(FIRST CUT) を示す。
→ -A, -B の組み合わせは“初期ラッカー対のセット”。
つまり、
A面:A0Z-A(初代ラッカー)
B面:A0Z-B(初代ラッカー)
これは 両面とも1stカット=最上位オリジナルの証 です。
素晴らしいレコードでした。
大切に保管しながら、偶に聴きたいと思います。
実は今から約20年前にもこちらのレコードを所有していましたが、その時よりも盤もジャケットの状態が良く嬉しいです。
