
Gary Bartz – The Shadow Do (1975)
入手困難度:☆☆☆★★
オリジナル盤自体は探せば出ますが、
状態の良いオリジナル
黄Prestigeラベル
ジャケット美品
盤ミント
となると急激に難易度が上がります。
レアグルーヴ人気
スピリチュアル人気
ジャズファンク人気
の3方向から需要があるため、長年評価され続けています。
アルバム総評
Gary Bartzの70年代作品の中でも、
スピリチュアルジャズからレアグルーヴへ移行した過渡期の傑作
です。
『JuJu Man』ほど荒々しくなく、
『Music Is My Sanctuary』ほどディスコ寄りでもない。
ちょうど真ん中に位置する作品です。
特徴は
スピリチュアルな思想
ジャズ的演奏力
ファンクグルーヴ
ソウル感
が高次元で融合していること。

このジャケットは、単純に「カッコいい」だけではなく、1970年代半ばのGary Bartzの思想そのものを視覚化した秀逸なデザインだと思います。
まず目を引く構図
左側
古代文明を思わせる彫刻
右側
Gary Bartz本人
この対比が非常に重要です。
単なる人物写真ではなく、
「古代の叡智」と「現代の黒人知識人」
を並べています。
左側のモチーフ
この彫刻はアフリカではなく、
メソポタミア文明の有翼神像(アッシリア系)を思わせます。
特徴は
翼
王冠
横顔
です。
Gary Bartzは当時、
アフリカ回帰思想だけでなく
古代文明や精神世界への関心が非常に強かったため、
この選択は偶然ではないと思われます。
Gary Bartzの視線
非常に面白いのは、
Gary自身がこちらを見ていないことです。
横顔だけ。
つまり、
鑑賞者ではなく
彫刻の方を見ている。
これは
過去を見つめる
祖先を見つめる
精神世界を見つめる
という意味にも解釈できます。
アフロヘアの存在感
1975年という時代を考えると、
この巨大なアフロは単なる髪型ではありません。
当時の黒人文化では
誇り
アイデンティティ
自己肯定
の象徴でした。
ジャケットの半分近くをアフロが占めています。
つまり、
Gary Bartz自身が
「思想」
として描かれている。
色彩が素晴らしい
使用色は実質
黒
金
セピア
のみ。
極端に色数を減らしています。
その結果、
非常に神秘的です。
派手な色を使っていないのに存在感がある。
これは高評価ポイントです。
吹き出しの意味
上部の
THE SHADOW DO!
の吹き出し。
これが実に面白い。
普通ならタイトルを大きく入れます。
しかしここでは、
Gary Bartzが何かを考えているように見える。
つまり
タイトル自体が思考の一部になっている。

アルバムタイトルの意味
The Shadow Do
直訳すると
「影が行うこと」
ですが、
実際には
人間の心の奥に潜むもの
目に見えない真実
を指している可能性が高いです。
裏ジャケットには
Who knows what evil lurks in the hearts of men…
とあります。
意味は
人の心の中に潜む悪を誰が知るだろうか
です。
これは昔のラジオドラマ
The Shadow
の有名なフレーズです。
つまりGary Bartzは
人間の内面や精神世界をテーマにしている。
Lester Youngへの献辞
裏面に
No bombs baby, just tittee-boom.
という言葉があります。
これは
Lester Young
の有名な言葉。
意味は
爆弾はいらない
音楽だけあればいい
というニュアンスです。
Gary Bartzはこのアルバムを
世界中のミュージシャンへ捧げる
と記しています。

最重要ポイント
Larry Mizell & Fonce Mizell参加
裏ジャケットに
Produced by Larry and Fonce Mizell
とあります。
これは非常に重要です。
Larry MizellとFonce Mizellは、
Larry Mizell
Fonce Mizell
として知られる兄弟プロデューサーです。
代表作は
Black Byrd
Places and Spaces
Mellow Madness
など。
つまり、
The Shadow Do はスピリチュアルジャズとMizellサウンドが融合した作品
ということになります。

メンバーが凄い
裏面から読み取れる参加者
Gary Bartz
Alto Sax
Soprano Sax
Synthesizer
Lead Vocal
Background Vocal
単なるサックス奏者ではなく、
この作品では完全なバンドリーダーです。
Hubert Eaves
Piano
Clavinet
Synthesizer
後の
Esoteric Funk
で有名。
レアグルーヴ好きには重要人物です。
Michael Henderson
Bass
元々
Miles Davis
バンド出身。
その後のソロ作品も人気。
Mtume
Congas
Percussion
後に
Juicy Fruit
を生む人物。

Sea Gypsyが特別な理由
クレジットを見ると
Sea Gypsy arranged by Larry Mizell
とあります。
つまり、
Gary Bartz作品でありながら
Sea GypsyはMizell兄弟色が最も濃い。
実際に聴くと、
Black ByrdやPlaces and Spacesの空気感に近いです。

Mother Nature の歌詞
裏面に歌詞が載っています。
内容を要約すると、
自然への賛歌
母なる自然は
あなたにも
私にも
石油にも
巨木にも
命を与えた
という思想。
さらに途中で
半分のパンでも
パンが無いより良い
というアフリカ系格言のような表現も出ます。
Gary Bartzは当時かなりアフロセントリック思想に傾倒しており、
この歌詞にもそれが反映されています。

Side A
1. Winding Roads
アルバムの導入曲。
柔らかいエレピとサックスが印象的。
タイトル通り人生の曲がりくねった道を感じさせる。
派手ではありませんが何度も聴くと良さが分かります。
2. Mother Nature
本作最大の名曲の一つ。
Gary Bartzの思想性が最も表れている楽曲。
自然との共生や人間への警鐘をテーマにしたスピリチュアル・ファンク。
幻想的なコーラスが素晴らしい。
3. Love Tones
メロウジャズファンク傑作。
美しいエレピとサックスが絡む。
深夜に聴くと非常に気持ち良い。
アルバム中でも再生回数が増えるタイプ。
4. Gentle Smiles (Saxy)
比較的軽快な曲。
タイトル通りGary Bartzのサックスを楽しむための楽曲。
アルバムの緊張感を和らげる役割。

Side B
1. Make Me Feel Better
★★★★★
レアグルーヴファン人気曲。
強いリズム隊とソウルフルなヴォーカル。
ファンク色が濃い。
DJ人気も高いタイプ。
2. Sea Gypsy
アルバム最高峰。
「奇妙で先が読めないのにカッコいい」
を体現したような曲。
約6分の長尺。
神秘的で海を漂うような浮遊感があります。
Gary Bartzのキャリアでも屈指の名演。
3. For My Baby
甘いメロウソウル。
アルバム後半のクールダウン。
温かみのある雰囲気です。
4. Incident
短いながら印象的。
アルバムを締めるエピローグ的作品。
映画のエンドロールのような余韻があります。

どうしてももう一度、入手したくなり、今回偶々、新宿のHMVレコード店に朝イチ伺った際に見つけました。
状態、盤も共に良く、大満足です。
大切にしながら、音楽を楽しみたいと思います。
